遺伝性網膜萎縮症について学ぶ


🧬 ブリーディングを始めたブリーダー様や飼い主様をサポートするため、今月からオリベットで現在検査が可能な遺伝性疾患を取り上げて詳しい情報を提供していきます。ご興味があればお読みください。

遺伝性疾患 D001
prcdPRA進行性網膜萎縮症

**prcdPRA進行性網膜萎縮症の概要**

進行性網膜萎縮症 (PRA) は、網膜に影響を及ぼし失明を引き起こす遺伝性疾患の総称です。犬種ごとに発症年齢や遺伝形式が異なり、網膜が機能を失う具体的なメカニズムもさまざまですが、それぞれの兆候や結果は似ています。一般的には最初に夜盲が現れ、その後視力が徐々に低下し、最終的に完全に失明します。失明に至る年齢は遺伝的要因や環境、犬種によって異なり、影響を受けた目は通常痛みを伴いませんが、白内障やブドウ膜炎(白内障の漏出による炎症)などの二次的な問題が発生した場合には痛みを伴うことがあります。

PRAはさまざまな方法で分類されており、よく見られるのは「発症年齢」による分類です。早期発症型PRAでは、影響を受けた犬は生まれつき夜盲の状態であり、通常1~5歳までに完全に失明します。一方、遅発型PRAでは、1歳以降に夜盲が始まり、その後生涯のある段階で完全失明に至ります。別の分類方法としては、PRAを引き起こす「遺伝的異常の種類」によるものがあります。PRAは、劣性遺伝、優性遺伝、または性染色体連鎖型遺伝のいずれかによって引き継がれることがあり、多くの犬種を対象にDNA検査でこの病気を簡単にスクリーニングすることが可能になっています。 しかし中には科学的な解明に至らない部分などもあり、PRAのDNA検査は、全ての犬種に対して可能なわけではないというのが現状です。また、犬種によっては複数の形態のPRAにかかりやすく、先述のようにすべての犬種に対して検査が可能ではないという現状から、犬種によっては獣医眼科医による網膜検査が診断テストの基本手段となっています。

遅発型PRAを持つ犬種では、網膜退行の兆候が明らかになる前に、複数回の眼科検査が必要となる場合があります。網膜電図のエレクトロレチノグラフィー(ERG)は、獣医眼科医が選択する診断テストのひとつであり、視細胞機能の喪失を非常に感度高く検出できる方法です。ERGは、PRAの早期発症型を持つ可能性がある子犬にとって非常に有効なスクリーニング検査です。

進行性桿体錐体変性 (prcd-PRA) では、網膜の視細胞が正常に発達した後、不規則性が生じ、徐々に機能を失います。prcdと呼ばれる遺伝子に変異が発見されており、犬がこの変異を2つ持つ場合に、この状態が少なくとも18犬種で発生することが確認されています。このprcdによる変異は常染色体劣性遺伝であり、DNA検査が利用可能です。

網膜の変化が始まる年齢は犬種によって異なり、ゴールデン・レトリーバーでは早ければ生後2年で臨床徴候が見られる場合もあれば、ミニチュア・プードルやトイ・プードルでは3~5年程度、さらにアメリカン・コッカー・スパニエルではそれよりも高齢になってから臨床徴候が現れる場合があります(遅発型PRA)。病気の初期には夜盲が現れますが、徐々に明るい光下でも失明が進行します。PRAの早期兆候を検出するには(特にDNA検査でポジティブ=アフェクテッドとわかった犬)、複数回の眼科検査が必要です。多くの場合、白内障が同時に発生し、それによりブドウ膜炎や緑内障を引き起こす可能性があり、痛みを伴うため適切な治療が必要です。

特にゆっくりと進行する失明であれば、犬は驚くほどよく順応して行きます。ただし、環境を一定に保つ必要があり(例:家具を動かさない、引っ越しをしないなど)、庭など外では常にリードをつけて行動し、驚かせないよう注意してください。鈴のような音の鳴るものが入ったボールなどをおもちゃとして利用することで、犬の精神的な刺激を促すことができます。

この検査が愛犬に必要かどうか不明な場合はご相談ください。


**その他の情報**

カテゴリー:眼科 - 目および目の構造に関連する疾患

遺伝子:9番染色体上の光受容体ディスクコンポーネント(PRCD)

検出されたバリアント・変異遺伝子:塩基置換c.5G> A p.Cys2Tyr

重症度:軽度-中等度。この病気は、罹患した犬に不快感を与えるなどの機能障害を引き起こす可能性があります。通常、平均余命には影響しません。

遺伝形式:常染色体劣性

推奨されるスクリーニング

1. 繁殖プログラムに入る前のすべての繁殖動物のDNA検査(例:1歳)

2. 子犬の目の検査で、その後毎年1歳から専門の獣医眼科医による検査

参考文献

Zangerl B, et al. Identical mutation in a novel retinal gene causes progressive rod-cone degeneration in dogs and retinitis pigmentosa in humans. (2006) Genomics 88(5);551-563.

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