変性性脊髄症/変性性ミエロパチー(DM:Degenerative Myelopathy)
▼疾患の概要
変性性脊髄症(DM)は、主に7歳から10歳頃に発症する、脊髄に影響を及ぼす重篤な遺伝性の神経変性疾患です。痛みはありませんが、麻痺が徐々に進行していくため、最終的には呼吸不全に陥る場合もあります。ヒトの筋萎縮性側索硬化症(ALS)に似た症状がある病気としても知られています。
多くの犬種でみられますが、特にジャーマン・シェパードやウェルシュ・コーギー・ペンブロークでは発症リスクが高いとされています。
本疾患は、SOD1遺伝子の変異による常染色体潜性遺伝と関連しており、後肢から始まる進行性の麻痺を引き起こします。現在のところ有効な治療法は確立されていません。
一方で、DNA検査により変異遺伝子の有無を把握することで、適切な繁殖管理を行い、次世代への発症リスクを低減することが可能です。
▼DNA情報
変性性脊髄症は、最も一般的にはSOD1遺伝子(スーパーオキシドジスムターゼ1)の変異によって引き起こされます。
この疾患は、不完全浸透を伴う常染色体潜性(劣性)遺伝形式をとります。
常染色体潜性遺伝では、変異した遺伝子を1つだけ受け継いだ場合は「キャリア」となり、発症リスクは基本的に低いとされていますが、繁殖の際には注意が必要です。
一方、変異した遺伝子を2つ受け継いだ場合は「ポジティブ/アフェクテッド(発症リスクあり)」となり、一般的には病気を発症する可能性が高くなります。
ただし本疾患は不完全浸透を伴うため、「アフェクテッド」であっても、すべての個体が必ずしも臨床症状を発症するとは限りません。
オリベットではDNA検査により、個体が「ノーマル(クリア)」「キャリア」「ポジティブ(アフェクテッド)」のいずれであるかを判定することが可能です。
▼症状
変性性脊髄症は、脊髄の神経が徐々にダメージを受けていく進行性の病気です。免疫の関与により神経線維が障害され、特に脊髄の白質で神経の働きが失われていきます。
多くの場合、7〜10歳頃に症状が現れ、後ろ足の感覚が鈍くなる、足の甲を引きずる(ナックリング)、ふらつく(運動失調)といった変化から始まります。病気が進行すると、麻痺は前足や呼吸に関わる筋肉にも広がっていきます。
一度失われた神経の機能は元に戻らないため、発症すると症状は徐々に進行していきます。
合併症:発症した場合、筋肉の萎縮や運動失調、進行性の麻痺がみられ、最終的には呼吸が難しくなることがあります。本疾患には根本的な治療法がなく、進行後期ではケアによる改善も限られています。そのため、多くの場合、排尿・排便のコントロールができなくなる、呼吸が困難になるといった重篤な症状が現れる前に、動物の苦痛を軽減する目的で安楽死が検討されることがあります。
▼早期発見と予防の重要性
本疾患は一度進行すると不可逆である(元に戻らない)ため、早期発見が非常に重要です。
ブリーダーは、キャリア同士の交配を避けるためにDNA検査を活用し、疾患の発生率低下に努める必要があります。
獣医師は、症状を早期に見極めるとともに、飼い主への適切な説明や、発症リスクの高い犬種に対する検査の提案が重要です。
早期に支持療法(神経の損傷を遅らせるためのサプリメントや薬の投与等)を行うことで進行を遅らせられる可能性はありますが、症状が進行した段階では有効性が大幅に低下するため、早期診断が重要となります。
また、本疾患は確定診断に病理解剖を必要とするため、診断されないままの症例も多く、実際の発症数は、調査結果よりも多いと考えられています。
▼繁殖の際の注意点
個体が変異遺伝子を持つかどうかを把握するため、繁殖前に遺伝子検査を実施することを強く推奨します。
キャリア同士(N/DM)の交配では、同腹の子犬のうち25%が発症個体(アフェクテッド/ポジティブ)となる可能性があるため、避ける必要があります。
繁殖の際は、クリア(N/N)の個体同士での交配を基本とし、キャリア個体は繁殖に使用しない、または使用する場合でも必ず相手をクリアの個体にすることが重要です。
また疾患の発生リスクを低減するだけでなく、遺伝的多様性を維持する必要があります。過度な近親交配を避けるため、近交係数(COI)を把握し、適切な繁殖管理を行うことが重要です。
▼基本情報
カテゴリー
神経系/神経学的疾患——脳、脊髄および神経に関連する疾患(Nervous system / Neurologic——Associated with the brain, spinal cord and nerves)
遺伝子
染色体31上のスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)
検出されたバリアント・変異遺伝子
塩基置換 c.118G>A
遺伝形式
不完全浸透を伴う常染色体潜性(劣性)遺伝
重症度
【中等度】
発症した場合、強い不快感や体の機能の低下を引き起こす可能性があります。進行性の疾患であり、症状は徐々に進行します。治療やケアに比較的費用がかかる場合があり、生活の質や寿命に影響を及ぼすことがあります。
関連犬種 +
アメリカン・コッカー・スパニエル
アメリカン・ピット・ブル・テリア
アメリカン・ブルドッグ
アメリカン・ブリー(マイクロ/ポケット/クラシック/XL)
アメリカン・ヘアレス・ラット・テリア
アイリッシュ・ウルフハウンド
アイリッシュ・セッター
アラスカン・マラミュート
イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
イングリッシュ・トイ・テリア
ウェルシュ・コーギー・カーディガン
ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
ウェルシュ・テリア
オーストラリアン・キャトル・ドッグ
オーストラリアン・ケルピー
オーストラリアン・コバードッグ
オーストラリアン・シェパード
オーストラリアン・シルキー・テリア
オーストラリアン・テリア
オーストラリアン・ブルドッグ
オーストラリアン・ラブラドゥードル
オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カタフーラ
カナーン・ドッグ
カネ・コルソ
キャバドール
カブードル
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
クーリー
グルードル
グレン・オブ・イマール・テリア
グレート・デーン
グレート・ピレニーズ
ケリー・ブルー・テリア
ゴールデン・レトリーバー
ゴールデンドゥードル
コトン・ド・テュレアール
シー・ズー
シェットランド・シープドッグ
ショーティブル
スコティッシュ・テリア
スタッフォードシャー・ブル・テリア
スタンダード・プードル
スプードル
セント・バーナード
ソフトコーテッド・ウィートン・テリア
ダッチ・シェパード
チェコスロバキアン・ウルフドッグ
チェコスロバキアン・ヴラック
チェサピーク・ベイ・レトリーバー
チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
チャウ・チャウ
チベタン・スパニエル
チベタン・テリア
テンターフィールド・テリア
トイ・プードル
ドーベルマン
ノーフォーク・テリア
ノーリッチ・テリア
ノバ・スコシア・ダック・トーリング・レトリーバー
ハーレクイン・ピンシャー
パグ
バタデール・テリア
バーニーズ・マウンテン・ドッグ
バーベット
バーネドゥードル
バーナードゥードル
ビション・フリーゼ
ビーグル
フィニッシュ・ラップフンド
ブラッドハウンド
フレンチ・ブルドッグ
ブリティッシュ・ブルドッグ
ブルマスティフ
ボーアボール
ボーダー・コリー
ボストン・テリア
ボストン・ブルドッグ
ボクサー
ボルゾイ
ポメラニアン
ポルトガル・ウォーター・ドッグ
ホワイト・スイス・シェパード
マレンマ・シープドッグ
ミニチュア・ピンシャー
ミニチュア・プードル
モヤン・プードル
ムードル
ラット・テリア
ラブラドゥードル
ラブラドゥードル(レトロドゥードル)
ラブラドール・レトリーバー
ランドシーア
ローデシアン・リッジバック
ロットワイラー
ワイアー・フォックス・テリア