フォン・ヴィレブランド病 タイプ I (vWD:von Willebrand's Disease Type I)

▼疾患の概要

フォン・ヴィレブランド病(vWD)は、犬で最も一般的にみられる遺伝性の出血性疾患で、血液凝固に必要なフォン・ヴィレブランド因子が不足することで、正常な止血が妨げられる疾患です。

フォン・ヴィレブランド因子は、血小板が損傷した血管壁に正常に接着するために必要な因子であり、血液凝固に重要な役割を果たしています。

本疾患には3つのタイプがあり、タイプI が最も一般的です。I 型では、血液中のフォン・ヴィレブランド因子が不足します。

フォン・ヴィレブランド因子の減少の程度には個体差があるため、同じ疾患を持つ犬でも、出血傾向の程度は一様ではありません。

これまでに60以上の犬種で報告されているほか、雑種犬でも確認されています。

▼DNA情報

フォン・ヴィレブランド病タイプI では、複数の異なる遺伝子変異が報告されています。

遺伝形式は犬種によって異なり、ドーベルマン・ピンシャーやクロムフォルレンダーでは、常染色体優性遺伝に不完全浸透を伴うことが報告されています。一方、その他の犬種では、常染色体潜性(劣性)遺伝の可能性が示唆されています。

不完全浸透とは、遺伝的な変異を持っていても、すべての個体に臨床症状が現れるとは限らないことを指します。そのため、同じ遺伝的変異を持つ個体でも、症状の現れ方には差が生じることがあります。

なお一部の犬種ではDNA検査を利用できますが、DNA検査で「ポジティブ(陽性)」と判定された個体でも、重度の出血傾向を示す場合もあれば、生涯にわたって明らかな出血傾向を示さない場合もあります。そのため、DNA検査の結果だけで実際の症状の程度を判断することはできません。

DNA検査が利用できない場合や、より詳しく出血リスクを評価するために、フォン・ヴィレブランド因子検査(vWFアッセイ)によって血中のフォン・ヴィレブランド因子量を測定することがあります。フォン・ヴィレブランド因子が50%未満の場合は異常値とされ、25~35%未満では出血リスクが高くなります。10~20%未満では、犬種によって重度の出血傾向と関連することがあります。

なお、フォン・ヴィレブランド因子の測定値は同じ個体でも変動することがあるため、必要に応じて再検査が行われる場合もあります。

▼症状

主な症状は、異常な出血や、通常より長く続く出血です。

犬種や個体によって発症時期も異なり、生まれた時から影響を受ける場合がある一方、成犬期や中年期になるまで明らかな症状がみられない場合もあります。

診断されていない犬では、通常の外科手術や外傷などをきっかけとして、生命を脅かすほどの重度の出血を起こす可能性があります。

出血が生じた場合には、血液または血漿の輸血が必要となることがあります。

▼早期発見と予防の重要性

普段は明らかな症状がない場合でも、手術や外傷をきっかけとして重度の出血が生じる可能性があります。

そのため、発症リスクが知られている犬種では、手術前などにフォン・ヴィレブランド因子の状態を確認しておくことが重要です。必要に応じて、vWF抗原検査、vWFコラーゲン結合アッセイ、口腔粘膜出血時間(BMBT)、血小板機能検査などが行われます。

DNA検査でc.7437G>A変異が確認された場合でも、不完全浸透のため必ずしも臨床症状が現れるとは限りません。そのため、DNA検査の結果だけでなく、フォン・ヴィレブランド因子の量や血小板機能などを含めて総合的に評価することが重要です。

また、出血リスクが確認されている個体では、手術や外傷などによる出血に備え、必要に応じて輸血や血漿製剤などの適切な処置を行える体制を整えておくことが推奨されます。

▼基本情報

カテゴリー

血液/リンパ系疾患——血液およびリンパに関連する疾患(Haemolymphatic——Associated with the blood and lymph)

遺伝子

フォン・ヴィレブランド因子(VWF)

検出されたバリアント・変異遺伝子

c.7437G>A

遺伝形式

不完全浸透を伴う常染色体顕性(優性)遺伝および常染色体潜性(劣性)遺伝 

重症度

【中等度】

発症した場合、強い不快感や体の機能の低下を引き起こす可能性があります。治療やケアに比較的費用がかかる場合があり、生活の質や寿命に影響を及ぼすことがあります

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