フォン・ヴィレブランド病 タイプ Ⅲ (vWD:von Willebrand's Disease Type Ⅲ)

▼疾患の概要

フォン・ヴィレブランド病(vWD)は、犬で最も一般的にみられる遺伝性の出血性疾患で、血液凝固に必要なフォン・ヴィレブランド因子が不足することで、正常な止血が妨げられる疾患です。

フォン・ヴィレブランド因子は、血小板が損傷した血管壁に正常に接着するために必要な因子であり、血液凝固に重要な役割を果たしています。

本疾患には3つのタイプがあり、タイプIIIでは、罹患犬の血液中にフォン・ヴィレブランド因子が検出できないほど少ないか、あるいは検出できない状態となります。

タイプIIIは、フォン・ヴィレブランド病の中で最も重症度が高く、重度の出血症状を引き起こす可能性があります。若齢犬でも重度の出血がみられることがあり、特にシェットランド・シープドッグで多くみられるタイプです。そのため、シェットランド・シープドッグを対象としたDNA検査も実施されています。

▼DNA情報

タイプIIIのフォン・ヴィレブランド病は、常染色体潜性(劣性)遺伝する疾患です。

常染色体潜性遺伝では、変異した遺伝子を1つだけ受け継いだ場合は「キャリア」となり、発症リスクは基本的に低いとされていますが、繁殖の際には注意が必要です。

一方、変異した遺伝子を2つ受け継いだ場合は「ポジティブ/アフェクテッド(発症リスクあり)」となり、一般的には病気を発症する可能性が高くなります。

疾患の原因となる変異を対象としたDNA検査によって、本疾患の発症リスクを調べることができます。

▼症状

タイプIIIでは、重度の出血傾向がみられます。

出血は、外傷や手術後に起こることがあるほか、明らかな原因がなくても発生する場合があります。

若齢犬でも重度の出血が起こることがあり、場合によっては生命を脅かす可能性があります。重度の内出血によって、夜間に死亡し、翌朝発見されるケースも報告されています。

内出血の兆候としては、以下のような症状が挙げられます。

  • 無気力
  • 食欲低下
  • 呼吸数の増加、または呼吸が苦しそうになる
  • 歯肉が白っぽくなる

また、出血症状があるにもかかわらず、血液凝固検査であるPT(プロトロンビン時間)およびAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)が正常、またはAPTTが軽度に延長している場合には、一般的な凝固検査では原因を確認できない出血症状の出る疾患として、フォン・ヴィレブランド病が疑われることがあります。その場合、フォン・ヴィレブランド因子の量を測定することで、疾患の発症を確認することができます。

▼早期発見と予防の重要性

外傷や手術などをきっかけに重度の出血が起こる可能性があるため、本疾患が疑われる犬や罹患が確認されている犬では、出血リスクを考慮した管理が重要です。

特に手術を行う場合には、出血に備えて血液または血漿を輸血できるよう準備し、必要に応じて入院下での集中治療を行います。

また、原因不明の出血や内出血を疑う症状がみられた場合には、早期に獣医師の診察を受け、フォン・ヴィレブランド因子の量を測定するなど、適切な検査につなげることが重要です。

▼基本情報

カテゴリー

血液/リンパ系疾患——血液およびリンパに関連する疾患
(Haemolymphatic——Associated with the blood and lymph)

遺伝子

27番染色体上のフォン・ヴィレブランド因子(VWF)

検出されたバリアント・変異遺伝子

C塩基の欠失

遺伝形式

常染色体潜性(劣性)遺伝

重症度

【中等度~重度】

罹患した個体では、臨床症状による生活への影響が大きく、一般的に寿命の短縮もみられる疾患です。

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